ある日突然宇宙に放り出されても「銀河ヒッチハイク・ガイド」があれば安心安全!
タイトルですべてを言い切ってしまった気はするが、ともあれ説明は必要だろう。この記事はダグラス・アダムス著「銀河ヒッチハイク・ガイド」を呼んだ感想文である。
ネタバレは極力控えたいと思うが、言及しなければ語れない部分もあるかもしれない。そもそも1979年に連載小説が始まり、ゲームや映画にもなったこの本で、いまさらネタバレを気にしても仕方がないのではないかと言う気持ちもある。
この本について語るにあたり、まずは誤解を解いておかなくてはならない。こんなタイトルではあるが、決してこの本は「銀河をヒッチハイクで旅するときに役立つガイドブック」などではない。
実際のところ同名のガイドブックは存在するが(多くの場合それはタオルの重要性を長々と説き、こ世のに存在する最高の酒は汎銀河ガラガラドッカンであると書かれている)、この本を読むにあたりそのガイドブックは必要ない。
話のあらすじはこうだ。ある日地球が消滅した。平凡な英国人アーサーはたまたま地球にいた(そしてたまたま友人となっていた)宇宙人フォードに助けられ、宇宙をヒッチハイクすることになる。
この本を読んだ最初の印象は「めちゃくちゃだ」である。そして次には「とても面白い」と思った。
まず展開がひどい。地球が消滅した理由は「銀河バイパス建設の邪魔だから」であり、有無を言わさずに宇宙人によって消滅させられた。宇宙に飛び出した後も聞くに堪えない詩を聞かされ、人工知能に嫌味を言われ、アーサーは様々な状況に振り回されてばかりだ。
そしてそれは読者も同じである。この本は銀河基準の用語が多数あり、我々地球人類には理解できない単語があちこちに散りばめられている。この本を読むにあたりそれがどういったものであるのか、我々は想像で補うしかないのだ。
とはいえこれは世界観を深く統一させられているということでもある。緻密に構成された宇宙世界の中で、飄々とした、それでいて皮肉の利いた語り口で綴られるアーサーの翻弄されっぷりは、読者の脳にはシュールコメディとして入力される。
実際この世界観とコメディーのテンポの良さで、私は二日とかからずにこの本を読み終えてしまった。読者を引き込む文章、そして読みさすさというのは何をおいても重要だ。
一方で、物語の作りもよくできている。一見めちゃくちゃな旅路だが、奇想天外な展開の中であちこちに伏線がちりばめられている。そしてそれらは銀河的表現の中に上手く織り込まれ、違和感を感じさせない。
しかしこの本を読み終えた時、なんとなく釈然としないものがあった。伏線が回収されていないのだ。なぜその他もろもろの回答があれであったのか、なぜ彼の頭の中はああだったのか。
それもそのはず。この作品はシリーズものなのだ。私は読み終わるまで気がつかなかったが、全5作で構成されている。今回回収されなかった伏線はこの先何らかの意味を持つのだろう。
数年ぶりにちゃんとした小説を呼んだが、いやはや図書館とは偉大なる場所であると痛感した。これを期に読書の習慣をつけ、あわよくばこのブログの質も多少なりとも上がればよいと思う今日この頃である。